2013年3月19日火曜日

アウディTTの魅力

  「官能的なドイツ車」とは存在しない理想のクルマを指す言葉だそうですが、あまりにも乱暴で「四角四面」な表現だなと思います。アウディTTを初めBMW6やメルセデスCLSなどいくらでも官能的なクルマはあるので、もはや死語なのかもしれません。ドイツ車のデザインが急速によくなったのはアウディがメルセデスとBMWに肩を並べるブランドに成長してからで、それまでは日本車もドイツ車もバッジが違うだけのデザインだったような気がします。

  アウディは2代目TT(8J)発売とともに、ブランドの勢いが増したようですが、このTTというクルマはデザインがスペシャルなだけで、シャシーやエンジンは全て他車からの流用という、なんとも評価が難しいクルマになっています。普通だったらボロクソに言われてしまうところなのですが抜群のデザインのおかげで、ブランドを代表する名車になっているあたりはさすがと言えます。ほぼデザインだけでここまでの名声を得ているクルマは他にはないんじゃないでしょうか。

  トヨタの部品を流用するレクサス車に対して厳しい意見がたまに見られますが、このアウディTTはゴルフのシャシーをそのまま使っています(アウディA3も同じ)。もともとゴルフの設計が優れているので、最高速度250km/hにしても問題ないようです。車体はアルミが多く使われていてゴルフよりも軽量になっています。エンジンもバリエーションが豊富ですが、いずれもゴルフやジェッタ、イオスといったVWブランドのものをベースに作られています。

  アウディはこのTTで世界にとても大事なことを発信したと思います。たとえ狭い車内だろうが、VWブランドの部品を使い回していようが、最高のデザインのクルマこそが最高なのだということです。日本のスポーツターボや欧州・北米の大排気量エンジンじゃなくても最高のスポーツカーは作れるし、デザインさえ良ければそれは最高に楽しいクルマになることです。このTTをクルマの本質に反するものと断じることができるでしょうか?TTより三菱ランエボXの方が乗る人に満足感を与えると言い切れるでしょうか?

  もっともTTだけが異端というわけではありません。スポーツカーの定義はもっと緩やかなものだし、乗る人を幸せにするアプローチはそれぞれのクルマによって違うのだということだと思います。ランエボとインプのように1つのニーズに双子のようなスポーツカーが存在するのは、ライバルを上回ることだけに眼が行ってしまって、あれほどモデルチェンジを繰り返しても一部のマニアにしか受け入れられないクルマにしかなれない結果になってしまうこともあります。日本メーカーにもこのアウディTTのような孤高の存在感を誇る「スペシャリティカー」を開発してほしいものです。

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