2014年10月31日金曜日

マセラティ・ギブリ が レクサスLS を超える日

  いくら「世界のトヨタ」といえども、気合が空回りしてしまいライバルに負けることもしばしばあります。最近の顕著な敗北例としては・・・全くやる気が見られなかった2012年FMCのオーリスが挙げられます。このクルマはトヨタが目指してきたCセグHBを日本市場で普及させるプロジェクトの系譜を引き継ぐはずの一台ですが、そんな目標があったなんて今では誰も信じないでしょう。それでも欧州ではゴルフやフォカスを押し退けてそこそこ売れたようですし、BMWのディーゼルを新たに搭載して今後さらなる飛躍を目指しているようです。

  このオーリス以上のトヨタにとっての誤算は、自信作だったはずのレクサスISが現在のところ3シリーズを販売台数で上回れていないことかもしれません。「猫に小判」・・・は言い過ぎかもしれませんが、「3シリーズの松◯宏」と「Cクラスの河◯ま◯ぶ」といえばお分かりのように、ライバル車に乗るような人々の多くは、クルマの良し悪しなんてまるっきり分らない、単なるトヨタ(日本車)嫌いが多かったりします。この両ライターは普段から国産車/輸入車を問わず評価するポイントがどうもブレブレな気がします。それぞれ3シリーズやCクラスに何を感じたのか?も全く不明ですし、レクサスISやスカイラインへの評価はほぼ言いがかりのような愚論ばかりでした。河◯ま◯ぶに至ってはスバルWRX・S4を上質と言い切ってしまうほどの筋金入りのクルマ音痴?です。強烈なのはyoutubeのインプレで、S4に乗って「これはもうSTIは無くてもいいんじゃない?」というかなり重症な"迷言"を残しておられます。

  トヨタが考えたようにドイツ車をしっかり研究し、それを全面的に上回るクルマを適正価格で発売さえすれば、3やCからシェアが奪うことは難しくない!というのはとても自然な気がしますが、やはり日本のユーザーを買い被りすぎだったようです・・・。トヨタらしくないマーケティングの読み違えとも言えますが、やはりこれまでトヨタがやってこなかった、ドイツ車を超えるといった新しいことをすると予期せぬ障害が発生するものなのかもしれません。しかし「レクサスISの掲げる崇高なコンセプトをまともに受け止められない日本のユーザーにがっかりです」・・・なんて開発主査に敗者の弁を吐かれるのは、1人のクルマ好きとして残念極まりないです。そして発売したばかりのRCの開発陣も日本市場には全くといっていいほど期待などしてないことでしょう。そもそも4シリーズが全く売れてないですから。

  さてオリジナル・レクサスとして知られる最上級モデルの「LS」も初代の登場からちょうど四半世紀が経過し、デビュー当時はアメリカ人ジャーナリストが「夢のクルマ」と評して熱狂したコンセプトもだいぶ風化してきました。常にこのジャンルをリードする存在の「メルセデスSクラス」は別格としても、経営危機にさらされながらも北米市場に支えられた「ジャガーXJ」をはじめ、「BMW7シリーズ」「アウディA8」「日産シーマ」といった登場から20年あまり経過したラグジュアリーセダンはいずれも瀕死の状態です。

  新興勢力としてはマセラティから2004年に復活を果たした「クワトロポルテ」、そして勢いを増すVWグループからは2009年に登場した「ポルシェ・パナメーラ」が、ブランド力を生かして北米で短期間の内に市民権を得ました。これらの次世代のコンセプトを標榜した、セクシィかつエレガントな魅力を持つ新型ラグジュアリーサルーンが台頭してもなお、レクサスLSは北米でもSクラスに次ぐ地位をしっかりキープしましたし、日本ではSクラスを追いやって夜の銀座や北新地といった一流の繁華街における代名詞的存在になりました。しかし昨年にマセラティが新たに発表した「ギブリ」が出てから、北米でも日本でもレクサスLSの地位が脅かされるようになりつつあります。ギブリのベースグレードの800万円台という価格設定がウケたようで、ギブリ単独でもアメリカで月販4桁!日本でも3桁!という驚異的な成長を遂げています。

  アメリカでのLSは現在は月販で500~700台程度で推移しているので、完全にギブリに抜かれてしまいました。このままギブリ>LSの関係が続くかどうかは不明ですが、カンパニーカー全盛の時代に設計されたLSと、ニューリッチなマーケットを狙ったギブリでは、やはりクルマのアピールする部分が大きく違いますし、個人ユーザーが所有欲を満たすとするならば・・・ギブリにやや分があるかもしれません。ちなみに北米での価格はLS(V8)が$72,000〜でギブリ(V6)が$67,000〜となっていて、ほぼガチンコといっていい価格帯です。ちなみにアメリカのSクラスは全てV8かV12なので、$94,000~と破格です。やはりイタリア車の魅力には逆らえない・・・といったところでしょうか。

  レクサスは日本で発売を開始したNXを、北米でも発売する予定で、北米レクサスはいよいよ4サイズのSUV展開(NX、RX、GX、LX)で、ドイツ勢(とくにBMW)を出しぬく構えのようです。アメリカ市場のナンバー1プレミアムブランドの座をめぐってメルセデスとBMWの後ろからレクサスが猛追していて、アメリカの現在のトレンドを考えると、SUVの売れ行きがこの勝負を決する最大のファクターであることは間違いないです・・・。たとえメルセデスやBMWをブランド全体での販売台数で上回ったとしても、ブランドの原点である「LS」が、まだ出て来て日が浅い「ギブリ」のようなライバル車にあっさり負けてしまうならば、レクサスの末長い繁栄は望めないでしょう。やはりどんなブランドでも、これだけの情報社会を生き残るには、絶対に他ブランドに負けない長所が必要ですし、25年前のブランド立ち上げから一貫してレクサスのクルマ作りの正統性を証明する存在はやはりLSだったわけです。

  それにしてもデビュー当初はどうも違和感があったギブリですが、マセラティが大好きな日本の国民性を反映してか、ドイツ車や日本車からの乗り換えが殺到しているようです。エクゼクティブ・サルーンとして「S」「LS」「XJ」「クワトロポルテ」「パナメーラ」よりも慎ましく、「GS」「E」「5」「7」「XF」「シーマ」「フーガ」「マジェスタ」よりも華がある、なんともジャストフィットな質感と感じているオーナーも多いと思われます。ドイツや日本のメーカーにもこれに対抗する艶やかな高級セダンを期待したいです。


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