2015年6月18日木曜日

フィアット500X 「イタリアからの・・・ハスラー?」

  「もしSUVを買うならどれにする?」・・・いや死ぬまで絶対に乗らないからいい!なんてトゲトゲしい本音をぶつけるのは、わざわざクルマの話でコミュニケーションを取ろうとしてくれた知人に対して無礼極まりないですよね。ブログとリアルではクルマに関しての意見が違う!のはちょっとどうかと思いますけど、やはり「クルマに詳しい」というのはあくまで教養であり非常に役立つコミュのツールなので・・・「正しく」使わないといけません。

  とりあえず出来るだけ誠実に、そしてあれこれとイメージを膨らませて、僅かばかりの試乗経験を考慮して話の相づちを打ちます。しかし最近では日本で展開する国内外のブランドから相当な数のSUVが発売されていますから、「CX5が良さそうだね!」なんて安易な意見では、そこらにいるオッサンと同じですから、せっかくのコミュ機会も台無しです。まあ本人が思っているほどに、相手にとってはどうでもいい事だったりするんでしょうけど、なんて言っていいかと悩むことが増えてきました。そしてそろそろ世界的に乱立するSUVを自分の頭の中で「序列・分類」して、ジャンルごとの「基準車」を選定してみよう!なんて「SUVにあまり興味がないクルマ好き」にとっては少々大それた考えが芽生えつつあります。

  しかし、まずはSUVをガンガン使い倒すくらいのオフローダーにならなければダメですね。・・・といっても普通乗用車でも未舗装路に平気で入っていく無鉄砲でデリカシーの無い人間なんで、ある意味ではSUVを理解できているという自負はあります。ややエクストリームなドライブの経験上で「最低地上高」の有り難みは理解していますし、あと10cmいや、あと5cmあれば行けると思いつつも引き返したことは何度もあります。しかしその一方で、ちょっとしたオフロードに「SUV」を持ち出したり、ちょっとしたワインディング路に「専用設計スポーツカー」で出掛けるってのは少々やり過ぎじゃない?なんて冷めた意識もありますけど・・・。

  クルマの「使用範囲」なんて個人個人で大きく違うので、それに合った走行性能のSUVにすればいいんじゃない?っていう意見は、ごもっともなんですけど、突き詰めると・・・病人運ぶなら「救急車」、瓦礫を運ぶなら「ダンプカー」なんだよ!と子ども相手にアドバイスしてるのと大して変わらないような気もします。これまではSUVも救急車やダンプカーと同じような「特殊用途」のクルマでしか無かったのですけど、いつの間にやら「ブランド・アイデンティティ」を発信する立派な存在になったようで、今ではすっかりセダン、クーペ、スポーツカーといった伝統の3BOX車と同じように、クルマ好きが「伝統」やら「思い入れ」をマニアックではなく、ファッションとして語れる時代になったのは否めません。ジャガー、マセラティ、ベントレーがSUVを作る時代ですし。

  ただし裏を返すと、これまではどの自動車メーカーにも平等にチャンスがあったSUV市場に、「伝統」「ブランド」「思い入れ」といった評価基準を強引に持ち込むことで、本来自由であった市場が硬直化して息苦しくなってしまうという弊害も考えられます。3BOX車の市場でハッキリと確立されている「ブランドの序列化」がSUVにも及ぶことで、当然に「人々の欲望」が集積されその結果として、プレミアムな価値を持つSUVが出現してクルマが単なる「道具」から「芸術品」へと昇華していく過程を「自然」とみるか「茶番」と見るかの意見は分かれるかもしれません。ちょっと偉そうなことを言いますが、クルマを作る人・乗る人・評価する人が発信するSUVへ向けての「カー・ガイの集合知」が、どれほど「高尚」なものかでその帰趨は数年の内に決まるはずです(もう決まっているのかもしれませんが)。

  これからもずっと世界中の人々が「クルマを買う」という行為を繰り返すでしょうが、そんなサイクルが続く中で、一般の人々をどれだけ「クルマ文化」に巻き込んでいけるか?は非常に重要な意味があると思います。自動車産業の主体がドイツや日本といったクルマ先進国から、新興地域へとその流出は加速しているようですが、もしクルマがただの「道具」から別のものへと変わるならば、それを防ぐことも可能だと思います。そしてクルマ好きの端くれとして、クルマ文化を守るためにも、これまで愛車は絶対に「3BOX車」と決めてかかっていました。新興国で作られるセダン、クーペ、スポーツカーを買うって想像できますか?(もちろん立派なクルマもありますけど)。 そんな意識が築けるクルマが存続すれば、ドイツ車も日本車も今後長く存在すると思います。そしてもしSUVがセダン、クーペ、スポーツカーに続く「第4の存在」になりうるのであれば、SUVへの態度を改めて歓迎したいと思います。

  現在世界のスーパーカー市場で存在感を増している「マクラーレン」のチーフデザイナーはロバート=メルビルという人で、なんと1978年生まれです。VWのマーク=リヒテ(現在はアウディのデザイン責任者)も36歳でチーフデザイナーに就任しましたが、マクラーレンのようなスーパーカー・ブランドでは異例の若さです。別にデザイナーに年齢なんて関係ないわけですが、さまざまな経歴を持った「スーパー」なデザイナーが数年ごとに一流ブランドを渡り歩くことが多くなっているようで、ジャガーのイアン=カラム(1954年生まれ)といった実績十分なベテランが今も第一線にいることで、なかなか若手デザイナーにとっては風通しが悪い業界なのかな?と思います。カーデザイナーとして一気に有名になった前田育男氏は、前任者がマツダを見捨てて?去ったおかげで、大きなチャンスが巡ってきてとてもよかったと思いますが、すでに50歳でした・・・。

  マクラーレンのロバート=メルビルがなぜチャンスを得たかというと、彼がSUVという「新しいジャンル」で早々に結果を残したからと言われています。30歳そこそこの若者に「花形」であるセダン、クーペ、スポーツカーを手掛けるチャンスなどないわけで、仮に巡ってきたとしても、強力なライバルがたくさんいる「成熟市場」でそんなに簡単に大きな成果を挙げることなんてほぼ不可能です。しかし彼は武骨で実用的なデザインばかりが溢れるひと昔前のSUV市場で、見事なほどに「クールなSUV」のデザインを完成させました。そのクルマはもちろん「レンジローバー・イヴォーグ」です。

  2009年にイギリスで販売が始まったこのクルマをきっかけに、SUVというジャンルは新たなステージへと進んだ!と個人的には記録しておきたいです。そしてさらにロバート=メルビルがSUVで結果を出したブランドが、伝統のSUVブランドである「ランドローバー」だったことも結果オーライでした(ランドローバーだからこそ支持されたかも?)。いまや世界中の若手デザイナーがこぞってSUVデザインに参入して登竜門にしようとしているようで、デザインの進歩が最も早いジャンルといってもいいかもしれません。最近ではランドローバーと並ぶアメリカの老舗ブランド「ジープ」から、とっても個性的なデザインの新型「チェロキー」や、アメリカンから大きく離れてアウディやマツダみたいなモードなテイストを見せる「コンパス」や「レネゲード」などなど、かなり攻めてます!

  さてそんなジープを傘下に収めるフィアットは、レネゲードの設計に、自慢のフィアット500に準じたデザインのボディを載せたSUV「フィアット500X」を年内にも日本に導入すると発表しました。ちなみにレネゲードは、なんとイタリアで製造が行われているようで、れっきとした「イタ車」です。開発はアメリカでジープが主体で行ったようで、コンパクトSUVとはいえ本格的なAWD機構を備えているそうで、この辺に本質を愛するイタリア人の気質が現れているように思います。いちいち例は挙げないですけど、日本のクルマ好きもやはり「本質」が備わったクルマが大好きだと思うんですよ(日本やイタリアに限った話ではないかもしれないですが・・・)。

  中国やヴェトナム、ロシアのメーカーによって組み付けられた現地仕様のSUVにドイツメーカーのエンブレムが付けられて本体価格418万円くらいで売られていて、それを有り難がって買い求める日本のユーザーが溢れていた頃には、SUVなんてくらだね〜って思ってました。しかしレンジローバー・イヴォーグの登場と、ジープの復活によって、SUVに新たな秩序が生まれ、いよいよSUVを「芸術的」クルマとして語る素地が出来上がりつつあるのかな・・・と感じます。ランドローバーをかつて傘下に収めてそのノウハウを受け継いでいるBMWでもいいですし、ドイツの軍用車両を受注してきた実績を持つメルセデスでもいいです。安易な言葉ですが「本質」さえ備わっているならば、もはやSUVを差別する理由もないように思います。

  で?何がハスラーかって? ポップなデザインで商品性を伸ばしつつも、クルマの本質を見失わない開発姿勢でしょうか? なんだか自然とオーバーラップしてきました。そして日本上陸を果たして、価格次第にもよりますけど、300万円以下で買えるようならハスラーみたいな予想外のヒットを遂げて、日本の津々浦々で「車中泊のリゾートカー」として愛される存在になりそうです。

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